AIを入れても仕事が減らない理由。電気が工場を変えるまで40年かかった話とは?

AIを入れたのに、仕事が減らない。

8月まで、うちがまさにこの状態でした。

私たちは兵庫県宝塚市で、兄妹で地域情報発信メディアをしています。妹が顔を出して地元のお店を紹介し、兄が裏側の仕組みを作る。これまでに地元のお店40社以上のSNSを見てきました。

その裏側は、かなりの部分をAIに任せています。noteは週6本、XとThreadsは毎日3本。インスタの数字も自動で集まってきます。朝に原稿ができて、昼と夜に予約どおりに出ていきます。

それでも、楽になっていませんでした。

だから今日は、AIの便利な使い方の話はしません。「入れたのに、楽にならない」のはなぜか。その話をします。

蒸気機関のときも、同じことが起きていた

AIは蒸気機関や電気と似ている、という話は、経済の世界ではかなり前から言われています。

蒸気機関、電気、そしてAI。この3つは「汎用技術」という同じ箱に入れられています。特定の業界の道具ではなく、あらゆる業界の土台をまるごと入れ替えてしまう技術のことです。

蒸気機関がやったのは、ひとことで言えば「動力を買えるものにしたこと」でした。

それまで、動かす力といえば人の腕か、馬か、水車です。水車を使うには川が要る。だから工場は川沿いにしか作れませんでした。蒸気機関は、その縛りを外しました。

AIがいまやろうとしているのも、構造は同じだと思っています。

読む、書く、調べる、たたき台を作る、判断を整理する。これまで全部、人の頭の中にしかありませんでした。だから事業の大きさは「何人雇えるか」で決まっていた。そこを「買えるもの」に変えつつあります。

ここまでは、聞いたことのある方も多いと思います。大事なのは、ここからです。

電気が工場を変えるまで、40年かかっている

汎用技術の話で、いちばん有名な例は電気です。

工場に電気のモーターが入ってから、生産性の数字がはっきり上がるまで、40年近くかかったと言われています。導入されたのに、効果が出ない期間が長く続きました。

理由は、工場の建物が蒸気の時代のままだったからです。

蒸気の時代の工場は、中央に太い軸が1本通っていて、そこから天井のベルトで各機械に力を配る作りでした。動力源がひとつしかないので、機械は軸の近くに並べるしかない。作業の順番とは関係なく、動力の都合で並んでいたわけです。

そこに電気のモーターを入れたらどうなったか。

軸を、電気で回しただけでした。何も変わりません。

電気の本当の価値は、機械1台ごとにモーターを置けることでした。動力を分けられるなら、機械は作業の順番どおりに並べていい。つまり電気の価値は、工場の並びを作り替えられることだったんです。

建物と仕事の順番を作り替えた工場だけが、生産性を大きく上げました。道具を買っただけの工場は、長いあいだほとんど変わらなかった。

「前と同じ仕事を、AIに聞きながらやっている」という状態は、これと同じ形をしています。軸を、電気で回している状態です。

うちが実際に測って、分かったこと

偉そうに書いていますが、うちも同じ穴に落ちていました。

9月のはじめに、兄の稼働時間をはじめて実測しました。それまでは「だいたいこれくらいかな」という感覚で予定を組んでいました。

出てきた数字は、感覚の1.8倍でした。

内訳を見て、手が止まりました。時間を食っていたのは新しい仕事ではなく、自動化した仕組みの世話だったんです。

止まったら直す。数字が取れなかったら原因を探す。仕様が変わったら書き換える。自動で動くものを増やすほど、面倒を見る対象も増えていきます。浮かせたはずの時間が、そのまま運転の手間に置き換わっていました。

工場に例えるなら、モーターを1台ずつ増やしたのに、配線は誰も引き直していない状態です。

手が残っていたのは、AIが作れない場所だった

もうひとつ、はっきり分かったことがあります。

うちはインスタで「◯◯5選」という、写真を何枚もめくる投稿を作っています。7枚の画像を作るところは、すでに自動です。文字と写真を入れれば、画像はそろいます。

じゃあ楽なのかというと、そうではありませんでした。

人の手が残っているのは、5店舗ぶんの紹介文25行と、その裏取りです。1行18字以内で、価格と営業時間を入れて、店名を間違えずに書く。

9月13日に、清荒神の参道の5選を作ったとき、裏取りで3つ出てきました。
1軒は他の市へ移転していました。1軒は業態が変わっていて、前に撮った写真が使えなくなっていました。1軒は、手元の台本の価格と、お店のサイトの価格が違っていました。

AIは画像を7枚作れます。でも「このお店、前に行ったときから変わっていないか」は分かりません。

そこで気づきました。自動化すべきだったのは、画像を作る工程だけでは不十分だった、と。

本当に作り替えるべきだったのは、写真と情報が集まってくる流れのほうでした。撮った写真がお店ごとに仕分けされて、どのお店の素材が何枚あって、いつ撮ったものかが一覧で見える。そこまでできて、はじめて「5選を1本作る」が軽くなります。

画像の自動化だけでは、軸を電気で回していたのと同じでした。

AIが書いた文章のどこを先に直すかは、水曜の記事にまとめています。道具の使い方の側から読みたい方は、こちらもどうぞ。


本当に変わるのは、やめる判断をしたとき

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

電気の話の教訓は「新しい道具はすごい」ではありません。建物を作り替えた工場だけが成果を取った、ということです。

工場の並びを変えるというのは、言い換えれば、今までの並びを捨てることでもあります。

うちが実測のあとにやったのは、新しい自動化を増やすことではありませんでした。年内にやる仕事の順番を決め直して、動いている仕組みのうち、どれを止めるかを決めることでした。減らす判断をして、はじめて時間が戻ってきます。

AIを入れて仕事が減らない理由は、たいていAIの性能ではありません。入れただけで、何もやめていないからです。

今日からできる3つ

  1. 1週間、自分の仕事を実測する。感覚と実測は、うちの場合1.8倍ずれていました。どこが重いかを知らないまま自動化すると、軽い場所を自動化してしまいます

  2. いちばん重い1工程だけを、AIではなく「順番」から疑う。この作業は本当にこの順でやる必要があるか。前の工程が変われば消える作業ではないか

  3. 新しく自動化したら、必ず何かひとつ止める。増やすだけだと、世話の手間として時間が戻ってきます。目安は、1つ増やしたら1つです

お店のSNSも同じでした。投稿文をAIに書かせるより先に、「何を投稿するかから決める工程すべて」を作り替えたほうが、結果的に楽になります。

道具は、もう十分すぎるほど手に入る時代になりました。

しかも今回は、蒸気機関のときと大きく違うところがひとつあります。蒸気機関は、工場を建てられる人のための技術でした。AIは、個人事業主も大きな会社も、ほぼ同じ性能の道具を月数千円から使えます。

だからこそ、差がつくのは道具ではなく、並び替えのほうだと思っています。


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地方の「おもろい」を発信する兄妹マーケター「タカたび」です。兵庫県宝塚市を拠点に活動しています。Instagramフォロワー約2.3万人(宝塚市最大規模)。兄は元楽天のECコンサルタント、妹は元地方銀行員。SNS発信とAIのフル活用を武器に、地元企業の集客支援とローカルインフルエンサーの育成に取り組んでいます。このブログでは、地域創生×SNS×AI活用の実践のリアルを毎日公開しています。

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